ウルフティー オーナー – ネイバーフッド台北掲載

「台北で注目される“街”と“カルチャー”を牽引する先駆者たちを紹介。古くて美しいものを大切にしながら、新たな文化をつくる彼らの言葉からは、観光スポットや美味しいお店情報以上に、台北の「今の魅力」が見えてきます。」美味しいお店や、お土産情報などは掲載されていないが、「人」を注目、新たなガイドブックです。本当に嬉しく光栄で、ウルフティーの話や、オーナーの価値観やビジョンもご紹介くださいました!


ドリンクスタンド=台湾茶のイメージを変えたい

Arwenはお茶の産地として有名な阿里山のある嘉義うまれ、阿里山のお茶を飲んで育った。お茶の師匠は茶師の父親。父と一緒にお茶を淹れては味や香りについて話し合うのが日常で、お茶の知識と造詣を培い、それが当たり前だと思っていた。大学に入って驚いたのは、台北で知り合った友達のほとんどがお茶について何にも知らなかったことだ。

「お茶を飲むというと、ドリンクスタンドかペットボトル。みんながそういうものを台湾茶だと思っていることにびっくりました。」

パートナーのDavidも実はそうした若者の一人だったそうだ。初めてArwenの故郷である阿里山を訪ね、彼女の父親にお茶を淹れてもらったとき、初めて本物のお茶に触れたのだという。

「初めて飲んだ時は、何も加えていないのに自然な花の香りがするのに驚きました。きっと多くの若者が僕と同じで、お茶の味を知らないだけなのだと思います。」

Davidは子供の時から行動力にあふれた楽観的な性格で、ちょうどその頃、彼の考え方にも大きな変化が起こっていた。
「祖母がアルツハイマー病にかかってしまったんです。彼女を見ていると、記憶が病気になる前で止まってしまっている。人間の記憶力は絶対ではないと感じました。だったら今この瞬間を大切にしたい、時間の主導権を自分で握っていたいと強く思って。パートナーと自分たちの事業を起そうと考えたんです。」

2013年12月、たった1ページのウェブショップから、ArwenとDavidの「琅茶」がスタート。顧問はArwenのお父さんで、「琅」の字は彼の名前の一文字から取った。

コンセプトは「此刻此地,獨一無二」

「琅茶」は、シングルオリジン、つまり茶農園や生産者がはっきりしているお茶を扱うことにこだわっている。いつどこで採れたお茶かはっきりしていて、安心して飲めるものばかりだ。もっと言えばたとえ同じ農園で同品種の茶葉であっても、収穫された季節によって味が異なり、それが毎年変化するそうだ。

「僕たちのお店のコンセプトは「此刻此地,獨一無二(このときこの土地、たったひとつ)」というものです。たった一日とれた日が違うだけで、お茶の味は変わってくる。そのときに出会ったお茶、それを飲む瞬間は唯一無二だとういことです。ここには時間の主導権を握りたいという概念も反応されています。」

お茶を若い人のライフスタイルに

「今ではほとんどのお茶の製造過程が分業化されています。でも私たちが買い付けている農園の人たちは、栽培から焙煎、私たちが買うまでの全ての工程が自ら手がけたもの。彼らはまるで芸術作品のようにお茶を作るんです」

製造過程が透明なお茶をシンプルで分かりやすいコンセプトで届ける。お客さんとの触れ合いの中で茶葉の種類も商品のデザインも豊になっていた。
「昔ながらのお茶屋だと若者にはちょっと敷居が高いのかもしれないですけど、お茶にはいろいろな楽しみ方があるということを伝えられたらと思います。」

利休が教えてくれたもの

(…)
「でもコピーではないです。利休が教えてくれたのは、自分の美学を大切にすること。もちろん茶室も利休を意識したものではありますが。重要なのは琅茶の美学は何か?ということなんです。自分たちにとってプロスペクティブなものとは何か。だから茶道具も台湾の作家のものを置いてますし。台湾を出発点にして、新しい自分たちの美の本質を求めたいと思っています」

未来への展望と思い

(…)
Davidは、ブランドの今後を訪ねると力強く答えてくれた。
「100年続くブランドにしたいですね」

うなずいてArwenが続ける。
「私たちが作ることのできる商品は全て小さいものですが、受け取った人の心に残るものでありたい。これからも自分の納得行く方法で生活し、お金を稼ぎたい。そして私が知り合いたいと思っている人たちと出会いたいです。」

文章はこの本から一部抜粋しております
ネイバーフッド台北 (Guide for walkable insider) 監修/吹田良平
台湾の今を取材して見えてきたのは「文創」という考え方。

今、注目のエリアを牽引する店と、時代を先取る台北のミレニアル世代(2000年以降に成人になった世代)の考え方から、「台北」という都市を切り取るトラベルカルチャーガイド。旅をただの観光で終わらせたくない人たちへ

 



コメントは受け付けていません。